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卵子提供による非配偶者間体外受精の現状とOD-NET設立の目的

体外受精でも赤ちゃんができないカップル

体外受精は通常の不妊症(2年以上望んでも妊娠が成立しない状態で、医学的措置を必要とする場合をいう)治療では子を持つことができないカップルのための治療法で、その数は毎年増加しています。
2009年度わが国での体外受精及び関連技術(総称して生殖補助医療技術とよぶ)の実施事例は20万周期を超え、26,000人の赤ちゃんが誕生しました。この数は全出生児の約40人に1人という割合になります。累積では国内で24万人を超え、世界中では500万人を超えています。
しかし体外受精でも、赤ちゃんができるには良質の卵子と精子が必要です。生れつき良質な卵子がない人、加齢によって卵子が老化した人などの場合は、残念ながら自分の卵子で体外受精を行っても赤ちゃんは期待できないのです。

海外では非配偶者間体外受精は20年以上前から行われています

自分の卵子で赤ちゃんが産めない女性が、妊娠出産するには第三者からの卵子提供による体外受精しか方法はありません。
この第三者からの卵子提供による非配偶者間体外受精は海外では20年以上前から行われ、2007年度では米国で約17,000周期、ヨーロッパ22カ国で15,000周期が実施されました。しかし年々増加する非配偶者間体外受精も卵子提供を希望する人が増加しているのに対して、卵子提供者(ドナーとよぶ)の人数が不足しているのが現状のようです、国によって異なりますが、米国、スペイン、タイ、インドなどでは有償で若い女性のドナーを募っています。

わが国ではまだ非配偶者間体外受精の議論は進んでいません

わが国には体外受精やその関連技術に対する法規則はありませんが、1983年日本産科婦人科学会(以下、学会)が作成した「体外受精は婚姻関係にある夫婦のみに認められる」という会告が現在でも公式見解とされています。
学会に所属する産婦人科医師はこの会告を遵守すうよう求められていました。
1998年長野県の諏訪マタニティークリニック根津医師が姉妹からの卵子提供による体外受精を実施して出産にいたったことを公表しました。これに対して学会は根津医師を除名処分にしました(のちに復籍)。そして2003年5月に厚生科学審議会生殖補助医療部会による”精子・卵子・胚の提供等による生殖補助医療制度の整備に関する報告書”(報告書)が作成され、生殖補助医療の法制化を目指しました。内容は条件付きですが卵子提供体外受精・胚移植の実施を容認したものでした。
その一方で、厚生労働省雇用均等・児童家族母子保健課は学会に対して「精子・卵子・胚の提供等による生殖補助医療については、報告書における結論を実施するために必要な制度の整備がなされるまで実施されるべきではなく、この旨会員に周知願いたい」という依頼文書を送り、以後学会は現在までこれを学会の見解としていますが、法律はいまだに成立していません。

卵子提供による非配偶者間体外受精は国内でも着実に増加しています

2007年JISART(ジスアート、日本生殖補助医療標準化機関、jisart.jp)は、加盟する施設から申請のあった2件の友人・姉妹からの卵子提供体外受精の申請案件について、JISART倫理委員会を1年間、合計9回開催し、2件の実施の可否について、慎重に審議を行った結果、実施を認めることにしました。
JISART理事会もこれを承認しましたが、実施にあたっては、事前に学会、厚労省、日本学術会議に申請、実施可否の判断を仰ぐことにしました。しかし回答はいずれも「判断する立場にない」という内容でした。それを受けてJISARTの2施設は友人・姉妹からの提供による非配偶者間体外受精を実施、2例ともに出産にいたりました。そして2012年4月までに諏訪マタニティークリニックとJISARTの5施設で168組のカップルに対して卵子提供による非配偶者間体外受精が実施され73件の出産があり、計81人が生まれています。(読売新聞東京版2012年5月1日)。それらのドナーはほとんどが姉妹でした。

しかしドナーは血縁・知人に限定されています

報告書では「ドナーは匿名者に限る」としています。その理由として「ドナーが血縁、知人であると家族関係が複雑になる」、あるいは「提供が強制される可能性がある」ということです。
しかし個人でドナーを探すことは実際上、困難なため、国内で実施された例はすべてが血縁、知人からの提供によるものです。ドナーが身近にいないカップルは海外(主にアメリカ、韓国、タイなど)へ渡航して卵子提供体外受精を受けています。
実数は不明ですが専門家によると少なくとも2,000組以上のカップルが過去に治療のために渡航していると推測されています。

卵子提供をお願いするための登録支援団体が必要です

このような状況で、公に匿名のドナーを探す努力が必要であるとの考えから、OD-NETが設立されました。
登録されたドナーデータはOD-NETが管理し、協力実施施設(JISART非配偶者間体外受精実施施設)の卵子提供希望患者さん(レシピエント)の情報を基に両者をマッチングして実施施設、及びドナーに連絡します。
その後は実施施設が、非配偶者間体外受精実施規定(JISARTが決めて公表しているガイドライン)に沿って慎重に行います。

実施施設

兵庫県神戸市
神奈川県相模原市
福岡県北九州市
広島県広島市